~ 人類学者の徒然なる詩考と猛想 ~

ポタラ前で大コルシェー!?[LHASA・TIBET]

コルシェーとは、チベットの伝統ダンスの王様のようなものである。

大勢で円くなって踊るもので、みなさんもどこかで観たことがあるかもしれない。

なんとそれが今、毎晩ポタラ前で繰り広げられている。

 

 

 

 

夜8時半ぐらいに、ポタラ広場に行ってみよう。

 

少し前までは、解放記念碑の前で、

大音響とともに奇怪な噴水ショーが繰り広げられるのみで、

中国人観光客を中心に群がっていたが、

今はチベタンが過半数、夜の広場を占拠している。

 

彼ら、彼女らは、このポタラ広場に、

夜な夜なコルシェーを踊りに来るのである。

 

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コルシェーは、昔の日本の盆踊りに構造は似ているかもしれない。

みな同じ所作で、円環になって踊りながら少しずつ進んで行く。

違いは、ややテンポが速いこと。そして、それよりもなによりも、

(「伝統の心」を失ってしまったと年配のチベタンによく嘆かれる)若者たち!

その若者たちに大変な人気なのである。 特に女性がノリノリである

 

このポタラ前での大コルシェーの行事の出自はよく分からないが、

地元政府の「文化政策」の反映であろう。

数ヶ月ほど前から政府関連のオフィスなどでは、

「みんなでチベットダンスを踊ろう」運動が上からあったらしく、

昼休みなどはレッスンがあったときく。

3月の何らかのイベントで踊る予定であったらしいが、それがキャンセルされ、

その余波かモーメントか分からないが、こうして毎夜ポタラで大コルシェー大会が催されるようになった。

 

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広場に流れる曲を注意してよく聞いてみる。

気のせいか、現代ラサを愛でる漢語の歌が多いような気がする。

そしてチベットの曲も、チベット人があまり盛り上がり過ぎないように、

微妙な選択がされているような・・。

 

それでも、チベット人好みのノリノリのテンポの曲が始まるや否や、

彼女たちは環のなかにどんどん吸い込まれていく。

それは、なんともすごい光景である。

大勢のチベタン美女が一度に吸い込まれる光景―。

 

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多くのチベット人にとって、

踊りと歌は、(先進国の場合のように)「趣味程度」に終わるものでは決してない。

もっともっと心の深いところで彼らを結びつけ、生命を与えるような、

極端かもしれないが、非常に宗教的な性格をさえ帯びてくるところがある。

 

もちろん踊りにも地域差や好みの差はあるのであるが、

このコルシェーという、バラバラな個人を(一時的にでも)全体へと

昇華・躍動させるようなものを目の前にすると、伝統文化というものの力を感じないわけにはいかない。

 

ところで話は変わるが、

十年以上前ラサに住み始めたころ、

このコルシェー、僕ら外人の目には非常に奇異に映っていたが、

そのせいであろう、なんともいえない魅力に感じ入ったものであった。

それが興じて僕ら留学生は、

芸術学部の舞踊専門の先生を毎週留学生寮にお招きし、コルシェーを習っていたのだ。

それでも飽き足らないノリノリの僕らは、派手派手な衣装をも揃え、

下手なコルシェーをガンガン踊っていた。

 

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若かったのか、バカだったのか(笑)。

 

とにかくいろいろ楽しかったのを覚えている。

十年前のチベット留学時代の話はあまりしないようにしているが(いつかどこかで書くかもしれないが)、

留学というよりも、完全に「遊学」であった。

 

話は戻って、ポタラ前のコルシェー。

いつまで続くか不明であるが、ポタラ裏のルカンでも毎晩催されている。

 

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(ルカンでコルシェー)

 

ラサに来られるみなさん、夕食後にでも、

ぶらっと散歩にポタラ前に出かけてはいかがでしょう。

コルシェーの環に交じれば、食後のいい運動になること間違いなし!

(ただし、高地にいることは忘れないようにしましょう、笑)

 

Daisuke/Murakami

 

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(五週間目、ちょっと美猫になったか。)

 

5月19日

(ラサの)天気: くもり時々晴れ

(ラサの)気温: 8~21度(昼間晴れると相当暑いです)

(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、フリースなど。 夜は(厚手の)フリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。帽子は被ったほうがいいです。空気は非常に乾燥しています。念のために、雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。

 

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