チベット人と猫 [LHASA・TIBET]
先月、4月12日。
2ヶ月ぶりにラサの自分の部屋に戻ると、新たな生命反応がふたつ!
チビ猫が2匹。
飼い猫のシロが子供を産んでいたのだ!
ホテルのスタッフによると、ちょうど2日前に生まれたらしい。
へその緒もまだついたままであった。
(生後三日目)
この数週間近く、まるでおっぱいを吸うために生まれて来たように、ずっとおっぱいを吸い続けていた。
そのおかげか、最初の鼠みたいな体つきが、見る見るうちに猫らしくなってきた。
それにしても案の定というか、予想通りというか。
春になると温かくなるため、猫は外出しやすくなる。
そして自然、発情もしやすくなり、情事も起きやすくなるのである。
また都合よく、僕が帰ってくるころにちょうど出産とは・・。
まるで計算していたかのようだ。
実は、去年も一匹産んでいたが、少し経った後亡くなってしまった。
今回はおそらく大丈夫なような気がする。
(生後三日目。左にへその緒が見える。)
名前を付けた。
一匹はヤンヤンと呼ぶ。
「ヤン」とはチベット語で「運気」とか「ツキ」とかいった意味である。
人間にも付けられる名前で、ほとんどの場合、女性に与えられる。
羊のことを「ヤン・ル」と言ったりするが、「運=羊」の意味で、
このグレーのやつは、性格が羊のように柔和なのでヤンヤンと呼ぶことにした。
(「ヤンヤン」三週間目)
もう一匹。
こいつは手ごわい。食い意地も張っている。
手で掴むと、この世の終わりとばかりに暴れる。
そして幼猫のくせに、すでに「オッサン顔」をしている。
(暴れるオッサン猫、生後一週間。)
こいつは斑(ぶち)があるので、ブチにしようと最初思ったが、
そんな平凡な名前ではキャラは表わせない。
ところで、チベット人の名前にブチという名前があるが、
それは「男を引っ張ってこい」という意味がある。
男の子が生まれると思ったのに、女の子だった・・。 お前、今度は男の子を引っ張ってこいよ、
という感じの意味合いが込められている。
フェミニストもびっくりのすごい名前だ。
うちのオッサン・ブチ猫であるが、
筋骨もしっかりしており、(メスだけど)ケンカが強そうなので、
偉大な大阪の漫画『ジャリン子チエ』にあやかって、「小鉄」にした。
小鉄とヤンヤン。
いまいち語呂が合わないが、そのほうが猫も自分の名前を覚えやすいかもしれない。
(「小鉄」。生後四週間経って、やっと「人面猫」の面影が消えていった。前世は人間だったのか?)
話は変わるが、
チベット人はあまり猫を飼う習慣がない、というか、
あまり猫のことをよく思っていない人が多いのである。
(アムドなどでは若干事情が違うようであるが・・。)
売春婦のことを、「猫」(チベ語で「シミ」)という隠語を使って表わすこともあるくらいで、
ネガティヴなイメージが強い。
その代わり、犬の好きな人は多い。
チベタン・マスチーフといったライオンのような番犬や、チャウチャウ犬なんかはよく飼われる。
以前にもこのブログで書いたかもしれないが、チベットの言い伝えによると、
人が死んで閻魔大王の前で審判を仰ぐとき、
その人が生前飼っていた動物たちが召還されるそうなのである。
飼い主がどんな人間だったかを犬猫にも聞くためである。
犬は、飼い主がどんな悪人でも、とても心優しい人でした、と答えるらしい。
ところが猫は、飼い主がどんな善人でも、こんな悪人はめったにいない、などと言うらしい。
なんともはや。
犬は飼い主に忠実、猫は自分勝手、という動物本来の習性が、
死後の世界の話にも反映されているのだ。
思うにチベット人は、
動物という生き物を人間の思うようコントロールしようとしすぎているような気がする。
ヤクといい、羊といい、犬といい、人間の都合を聞いてくれるものばかりである。
(先日、ゴールデンウィークに添乗でやってきた風スタッフ・Sさんから猫テントを頂く。)
猫は、天上天下唯我独尊。
もともと他者の願いや欲望を、鼻から認識外に置いている。
脳の物理的構造において、おそらくは。
こちら人間側が恩着せがましくすると、たまらなく嫌らしい動物に見えてくるというもの。
猫の猫たる所以は、
「何か役立つことをする」ことではなく、
「ただその場にいる」ことにあり、
それだけで存在理由を成立させている、摩訶不思議な生き物なのである。
話は戻って、うちの小鉄とヤンヤン。
まだよちよち歩きなのであるが、そろそろ、トイレのしつけをせねばならない。
仔猫餌も必要になってくるであろう。
(生後三週間半。)
「風のチベット」でラサに来られる猫好きのみなさん、
うちの部屋を猫カフェのように開放いたしますので(?)、
どうか美味しい日本の猫餌、よろしくお願いします!?(笑)
Daisuke/Murakami
5月7日
(ラサの)天気: くもり時々晴れ
(ラサの)気温: 5~16度
(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、フリースなど。 夜は(厚手の)フリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。念のために、雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。
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