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~ 人類学者の徒然なる詩考と猛想 ~

「評判のいい!?」チベット大学の日本人留学生たち[LHASA・TIBET]

Daisuke Murakamiのチベット駐在日記

先日、ラサに住んでいる日本人留学生たちと飲みにいく機会があった。

そのとき彼らが話してくれたのだが、どうやらやはり、そのようなのである。

 

 

 

 

「評判のいい」とはここでは、

チベット語の先生方や留学生担当のスタッフたちから、といった限られた範囲である。

ではいったい「評判のいい」とはどういうことなのか。

何がそう、身近なチベット人たちに好印象を与えることになるのか。

 

自己評価となると、なかなか「客観的」判断を下すのは難しい。

原理的・感情的に、どうしても過大評価と過小評価の間を行ったり来たりするものである。

特に、若ければ若いほどそのようであろう。

では、ただそれだけ、なのだろうか。

 

実は、僕は十年ほど前にはチベット大学の日本人留学生をしていたので、

なんとなく彼らの言わんとするところは分かる。

 

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(おお、若い!! 厳冬の小教室にて。)

 

チベット語の先生方が日本人学生に好印象をもつのは、

まず第一に、日本人のチベット語習得の速さにある。

日本語とも文法が比較的近いチベット語は、日本人にとって最も学習しやすい外国語

のひとつである。特に口語などは、ラサにしばらく住めば、

生活にあまり不自由ないレベルまでは、ほぼ誰でもしゃべれるようになれるのではないか。

先生たちも、「教え甲斐」があるというものである。

しかし先生方は、日本人学生の性格のある側面が、

チベット語に慣れ親しむのを助けていると思われている節がある。

 

そして、日本人学生一般に対する好感的眼差しは、

― そんなに驚くべきことではないのかもしれないが ―

僕が初めてラサに来る十年以上前から、もうすでに完成されていたのだった。

 

2000年の秋。

チベット大学で留学生を集めてのオリエンテーション

欧米などいろんな国からの外国人が総勢40人ほどいたが、僕もその中の一人で、

わくわくした心持ちで臨んでいたのを覚えている。

留学生の担当官が、授業について、ラサでの生活について、一通りの説明をされたが、

最後の締めで次のようなことをおもむろに語られた。

 

・・・1993年以来、私たちは様々な国から多くの留学生を受け入れてきました。

その中で、最も優秀な学生は常に日本人でした。彼らは勤勉で、一生懸命勉強するのです。

最初全くチベット語ができなくとも、半年、一年と住むうちに、とても流暢になっていきます・・・ 

今年も幸いなことに、日本人学生が数人います。

みんなも彼らの勤勉さ、振る舞いを見習い、ついていくように・・・

 

!!?!

なんてことを言ってくれるんだ、この担当官は!?

日本人はみんな優秀!? おかしすぎるぞ!

前の学生は優秀だったかもしれないが、今のオレたちには何の担保も保証もない。

みんなの前でこんな露骨に表明されるのは、決して気分のよいものではなく、

みなを鼓舞したつもりかもしれないが、なんとまぁ、なんてこと言ってくれんねん!

 

と、他の日本人留学生たちと困惑・苦笑した。

 

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ポタラにて野外授業)

 

しかし、一年、二年と住んでいるうちに、

この担当官が言わんとしていることがなんとなく分かるようになった。

それは、変な発見かもしれないが、

日本人が特に、勤勉、真面目、ということではなかった。

どちらかというと我々日本人学生は、遊学とばかりに、遊び好きなほうではなかったか。

欧米人や韓国人など他のアジア人に、勤勉な人はずっと多かったのである。

 

ただ一点、大きく違っていたことは、

欧米人など他の留学生たちが、ある種の宗教的信条や、学問上の研究計画、

そしてその他個々人のキャリア・アジェンダにあまりにも捕らわれすぎ、

そういった枠組みの中で、チベット人と交流し、チベット文化を捉えるような

傾向のある人たちが多かったように思える。

それにひきかえ日本人学生は、あまりそういった枠というか、イデオロギーというか、

社会的・学問的プレッシャーに縛られることなく、

(そのプレッシャーから脱出するために、ラサに来たのであるから!笑)

ほぼ素のままで、チベット文化の中に飛び込むような人間が結構いたのである。

 

どっちがいいとかわるいとか問題ではないが、

思わぬハプニングとか、思わぬチベット文化の内奥とか、思わぬチベット人とか(配偶者の発見も含む、笑)

そういう偶然性・縁に遭遇しやすいのは、やはり後者ではないかと思うのである。

 

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(アメリカ人のチベット仏教徒研究者に連れられて、毎月10日(グルリンポチェの日)

ジョカンに千本ものバターランプを灯しに行っていた。一人で千本は大変だから、手伝ってくれ、と。)

 

それでも僕の同級生だったアメリカ人の中には、すごい人たちもいて、

本人の卓越したチベット語の能力はもちろん、チベット人の気心や察しまで自然に

(本当に自然に)身につけている人もいた。

並々ならぬコミュニケーション能力のある人格者だったのである。

そういう人たちからは僕も学ぶことが少なくなかったが、

それよりもなによりも、ラサで彼らと一緒に遊びながら

こころの毛穴を開いていくのは、非常な快楽であったのである。

 

あまり計画性もなく、ただ単にチベットに長期滞在するだけでは、

成果を伴わないだけでなく、身心ブラブラ病を患う危険性がある。

しかし、同時にこういうことも言えよう。

強引な喩えかもしれないが、ある意味あしたのジョー』の「ノーガード戦法」のような

ポーズをとっているからこそ、「一発クロスカウンター」もあり得るのである。

(まぁ、少なくとも、その「夢」は見れる、笑)

 

... 破壊的なリスクを必然的に内包しているが、チベット世界の中で体験できる、

ある種の豊穣さや充実感のようなものも常に感じつつ ...

 

話はもどって、今の日本人留学生たち。

先日はチベット人たちの先生方主催で、留学生たちを連れて、

リンカ(ピクニック)に行ったとか。

チベット人らしく(!?)午前中から飲んだり歌ったりしたらしい。

先生方は全員民族衣装を着てこられたというから、先生の歓待ぶりが窺える。

 

ほとんどの留学生が午後早々とパラパラ帰ってしまう中、

最後の最後まで(夜まで)先生たちと付き合って飲んでいたのは、日本人留学生だけだったという。

つまりはこういうことだと思うのである。

「評判がいい」ということは。

 

今秋には新しい日本人留学生がたくさんやってくるという。

これからも、「優秀な日本人学生」という歴代の評判を、ぜひ保ってほしいと思う。

お酒の力でもなんででもよいが(笑)。

 

Daisuke/Murakami

 

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ヤンヤンと小鉄)

 

7月14日

(ラサの)天気: くもり時々雨

(ラサの)気温: 11~25度(今月に入って、雨が多くなりやや涼しくなっています)

(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、Tシャツ、フリースなど。 夜はフリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。帽子は被ったほうがいいです。空気は非常に乾燥しています。雨期なので雨具も忘れずに。

 

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