~ 人類学者の徒然なる詩考と猛想 ~

2011ラサの夏 [LHASA・TIBET]

暑くてまぶしいラサである。

 

 

 

 

暑い―、とはいっても日本の夏の暑さとは異なる。

地面やアスファルトからもわっと湧き出る日本の蒸し暑さに比べ、

ラサでは、太陽光にまるで頭を叩かれているかのように、

暑さは上からまっすぐ刺してくる。

ちょっと大げさに言うならば、「暑い」というより、「痛熱い」のである。

 

この<上からの暑さ>に耐えかねて、先日、プライドを捨てて帽子を買ってしまった・・。

「プライドを捨てて」というのは、頭の大きい僕には帽子が全く似合わないのだが、

そんなことも言えなくなってきたのである。

 

ところで、

昼間は暑いラサだが、夜には涼しくなり、ビールも美味しく飲める。

 

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(ラサの新ビール「8°P」(パードゥ))

 

今年にはラサの地ビールの新銘柄も発売された。

「8°P」(パードゥ)と呼ばれるもので、チベットのはだか麦から加工されたビールである。

今までは味の薄い「拉薩啤酒」(ラサビール)が主流であったが、「8°P」はなかなかコクがあり美味い。

日本人を含め、「外人受け」しそうなビールである。

 

(ラサに来られるみなさんは、高山病対策のため、飲酒には十分注意しましょう!)

 

ビールといえば最近、輸入ビールもラサで見るようになってきた。

地元のバーなどに友達と行くと、僕はギネスやホーガーデンなどを飲むことが多いが、

ラサで飲んでもやはり美味い。

ところで、外国にあれだけ流通している日本のアサヒドライがないのはどうしてだろう。

早くラサにも上陸してほしいものである。

若者を中心にチベットでも広く受け入れられる気がするのだが。

 

先日、北京の日本大使館の丹羽大使がラサにいらっしゃったが、

自治区政府の高官と、日本企業のチベット自治区進出について話し合われたそうである。

昔は様々な理由で躊躇された外国からの投資であるが、

多くの地元チベット人が益するような条件であれば、どんどん日本の企業もこのラサに

やってきてほしいものである。

吉野家のヤク牛丼とか、

あの美味しいチベットのジャガイモの入った世界レベルの日本のカレー

そしてはだか麦から作られた日本の生ビールなどは、ラサで必ず成功すると思うのだが・・。

非常にもったいない・・。

(食べ物ばかりで発想が貧弱すぎるか・・笑)

 

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(昼間、バルコルにて)

 

ところでラサの夏、

外国や日本からチベット関係の研究者たちが集まってくるのも特徴である。

それで、ちょっとした同窓会みたいになる。

今夏は、KくんやMちゃん、Kちゃんなど日本の若手チベット学者に会ったが、

上のホーガーデン片手にお互い情報交換をしたり、将来のことを話したり、噂話にも花が咲く(笑)。

大学や研究所などに所属していない僕にとって、彼らとの時間は刺激的なものとなるのが常なのである。

 

夏にはまた、僕の昔のチベット人教え子たちにもよく会う。

彼らの多くは、日本語ガイドとして働いているのだが、

ホテルやら観光地でばったりと出くわすのである。

先日はKに会ったが、彼は今冬日本に数ヶ月ほど旅行したようで、

すっかり日本のことが好きになってしまったようである。 

「前から好きだったけど、住んでみてもっと好きになった」と言う。

これからも仕事などで何度か日本に行く機会があるようだ。

よくよく話すと、どんどん<チベット人離れ>してくる自分自身に

少し葛藤があるようだが、これからも自分の道を進んでほしい。

 

十年前会ったときから、不真面目だが頭や勘の鋭い男で、全く力みのようなものはなく、

集団に溶け込まず、なんかコイツはやるかもしれない、

と思っていたが、まさにKはそのようになりつつある。

 

また昨夜は偶然、Nに会った。

Nもまた、集団に溶け込めない子であるが、

頭も感性もよく、新奇なものを常に追い求めるチベットでは珍しいタイプの女の子である。

今は日本語だけでなく英語のガイドもやっており、

結婚もしたがバツイチで(現代ラサでは決して珍しくない)、職も転々とし、

なんとも落ち着きのない子であるが、上のKと同じく、

やんちゃなほど可愛く思えてくるのが、おそらく(元)教師の性なのかもしれない。

 

そのNとホテルの中庭でギネスビールを飲んでいると、風のお客さんたちに出会う。

Nはそのとき、どこのファッション雑誌から飛び出てきたのかと思うほど、

乙女チックな服を着ていたのだが、自然な体(てい)で、僕のお客さんに丁寧に挨拶した。

 

そしてお客さんが去った後、

「センセイ、ごめんなさい。チベット人なのに、こんな格好をしたまま、

先生のお客さんにご挨拶するなんて・・」と、恐縮気味であった。

 

NもKも、チベット人である。

「センセイ、こんな自分でどうしよう!? 」とよく言ってくるが、

僕は「君らは性根がドッパ(「遊牧民」の意)だからしょうがないよ。

僕と同じや」と言うと、

まんざらでもなさそうに笑うのである。

 

Daisuke Murakami

 

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(今年の夏は、陽も射し、雨もたくさん降るせいか、ブルーポピーがたくさん咲き乱れていた。ガンデン寺裏の巡礼路にて。)

 

8月24日

(ラサの)天気: くもり時々晴れ、時折夕立あり。

(ラサの)気温: 9~23度 

(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、Tシャツ、フリースなど。太陽が出ると、かなり暑いです。夜はフリースなど。日焼け対策は必須。空気は非常に乾燥しています。雨具は持ってきたほうがよいでしょう。ゴアテックスの雨合羽は非常に便利です。