2012年度の始動 [LHASA・TIBET]
二ヶ月ぶりのラサは、特に何の変化もない。
やや雲が多くなってきていること、そして確実に温かくなってきていること。
ただそれぐらいである。
「わぁ太ったねー! それに肌も白くなったよ!」
と、ラサの常宿に着いて早々、スタッフたちに迎えられる。
この文句、実はラサでは常套の褒め言葉なのである。
適度な「肥満」体は、富裕の象徴である。 特に田舎では。
そして今や「色白」は、ハイカラなラサ女子の間でブームになっている。
モダン(現代)とトラディション(伝統)が混在したような
奇妙な褒め文句だが、ラサではよく用いられるのである。
当然、僕はあまり嬉しくないのだが(黒くて太っていないほうがいいに決まっている!)、
仕方がない。毎回帰国の度に、確実に4キロほどは太ってくるのだから。
(雪の残るラサ周囲の山々)
というわけだからではないが、
昨日はチベットを代表する健康栄養食品<ツァンパ>を買いに行った。
いつもスイートティーや脂っこい中華料理など食べていてはだめだ。
大麦を炒って粉にしたツァンパは、日本の<はったいこ>(麦こがし)に相当する。
朝だけでもこのツァンパにすれば、少しはましになるか・・。
だが、もちろんバター茶やらチーズやらをこのツァンパと混ぜて食べるのが一般的なので、
これもあまりいいアイディアではないのかもしれない。
(石臼で作られるツァンパ)
代わりにヨーグルトと混ぜて食べるぞ!と友達に言ったところ、
「そんな気持ち悪い組み合わせ、わたしはよう食べん」と、一蹴されてしまった。
(カムのある地域では、この食べ方が一般的なようだが)
「実験」すると・・
う~ん、確かに新しい体験・・!(苦笑)。
バター茶とツァンパのゴールデンカップルは、
同じ方向を向いてちゃんとリズムをとっているのに対し、
ヨーグルト&ツァンパはなるほど、
お互いの個性がガチンコぶつかってしまっているような気がする・・。
(ヨーグルト&ツァンパ)
ところで今春の一時帰国の間、
風のカルチャー講座でチベット文化の象徴について講義させて頂く機会を頂いた。
特に僕はチベットの象徴について研究しているわけではないのだが、
チベット文化は象徴の宝庫。
チベットに少し住んでいるだけで、否応なく目に入ってくるもので、
そして否応なく興味も湧くものである。
(ブータンの家屋に描かれる白獅子とガルーダ、そしてポー[男根])
例の八大吉祥や仏教の聖獣からはじまり、
家屋に描かれる不思議な記号や、妖しげな護符やらの話から、
神仏の供物トルマと<太陽の塔>の縁起話などをしているうちに、
準備してきたものの半分ぐらいで、あっという間にタイムオーバー。
僕のいつもの悪い癖。
例によって講義の準備をしすぎたのである!
「村上さん、この間の講義、オチなかったよー!」と、あとで鋭い大学院生に突っ込まれた(笑)。
実はオチはあったのだが、とてもそこまで辿り着かなかったのである。
つづきは、次回ということで!(笑)
太陽の塔といえば、今春も何度か拝する機会があった。
チベット学や人類学の文献の充実している民族博物館の図書室に用事があったのだ。
太陽の塔―。
いつ見ても、何とも言えない気持ちにさせてくれる。
周囲を圧倒するあの様態、あの怪獣のような出で立ち、周りを無視したあの巨大さ。
どんくさくもピヨピヨしているようで、あらゆるカテゴライゼーションを拒む、
生モノと無機質の間―。
(実はこのような得体の知れないものほど、言葉を紡ぎたくなってくる衝動にかられるのであるが・・)
僕はモノレールの万博記念公園駅を降り、
坂を下りながら視線を太陽の塔にやる。
そして、どんどん近づいていき、中央ゲートをくぐり、
仰ぎ見ながら、太陽の塔をコルラ(周回)し、民博へと足をゆっくりとすすめる。
ゆっくりと、である。
周りの風景に身体を馴染ませながら、深呼吸をしながら。
そして民博に着くと、一階の広いロビーで缶コーヒーを買い、
水場のそばにある足の短いエスニック調の木椅子に腰掛け、
水の音に耳を澄ませながら、太陽の塔のパワーで
大きくなりすぎたこころを静かに鎮めていく―。
ひらいて、むすんで、である。
これが、みんぱくの図書室に臨むときの僕のいつもの<儀式>となっている。
(黒太陽と桜と太陽)
今年の日本の桜は、とても綺麗でした。
2012年度の始まりです。
チベットも観光シーズンの始まりです。
本年度も宜しくお願い致します。
Daisuke/Murakami
4月16日
(ラサの)天気: くもり時々晴れ
(ラサの)気温: 3~17度
(ラサでの)服装: 昼間はシャツ、フリースなど。 夜は(厚手の)フリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。念のために、雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。
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