ラサの若者の流行り言葉と激辛おやつ [LHASA・TIBET]
ラサでも中国と同じく、「九〇后」(ジョーリンホウ)という言葉がある。
90年代に生れた若者世代を指す俗称で、なにを考えているのか分けが分からん、
といったニュアンスがある。
そのラサのジョーリンホウを象徴するかのような、彼らのよく使うフレーズがあり、
それが、このところラサ人の話題によくのぼる。
「キボインダー!」
「(オレたち)楽しいぞー!」「幸せだぞー!」といった意味なのだが、
これをお酒の席などで、「乾杯!」(チベ語で「シャプタ」)と言う代わりに、
グラス片手に叫ぶ若者が増えてきているのである。
中には、「よぉ!」みたいな感じで、この「幸せだぞー!」を挨拶言葉としても使うとか。
僕はさすがに十代の若者と飲む機会などなく、
この言葉をお酒の席では直接聞いたことがないのだが、
僕と同世代のチベット人などが、最近の若者のチベット語の用法が
急に変ってきていると口々に言う。
一昔前までは、チベット語と中国語をまぜこぜで話す若者を嘆く大人が多かったが、
今ではチベット語そのものがなんだか「現代風」になってきているのである。
(先日ポタラで見かけた「〇〇后」。彼らはどんな新語を生み出すのか。)
そして、
上の「キボインダー!」と同じく、もうひとつ、若者用語としてよく挙げられるのは、
「シェ~ナン!」という言葉。
これは本来「怖い」とか「恐ろしい」といった意味なのだが、この言葉はなんと、
「非常に美味しい」といった意味合いでも用いられ始めている。
美味しい料理を味わい、思わず出てくる言葉が、
「本当に恐ろしい!」、なのである。
うーむ・・。
このノリは最近日本の若者がよく言うところの、
(これまた旨い料理を前にしての)「ヤバイ!」という表現と
類似していないであろうか。
両者に共通するのは、食つきたい(=自分の体の一部としたい)モノに対する、
擬似的恐怖感・逃げのパフォーマンス、ひいては<逃げ切れなさ>を表現しているところである。
思わずフロイト的な読みをしてしまいそうになるが、それはおそらく行き過ぎであろう。
(ラサで流行りの「激辛おやつ屋」。狭いが十代の若者たちでいつも凄い賑わい。)
もうひとつ、ラサの若者の間で不思議な現象がある。
といっても女性限定であるが。
それは、彼女たちの激辛に対する強い欲望である。
日本でもヨーロッパでも、女性は概して甘いもの好きである。
特にチョコレートに対する執着は、我々男の理解をはるかに超えるものがある。
僕の住んでいたイギリスなどでは、(これはただの俗信だと思うが)
“Chocolate is a substitute for sex” ―チョコレートはセックスの代用― などと言われ、
イギリス女性は、本能だから仕方ないのよ、とばかりに、
堂々とバクバク、リンゴでもかじるように食べていたのを覚えている。
(「涼粉」と「フライドポテト」。ラサのゴールデンおやつカップル。
上に振りかける赤唐辛子は少なめにしてもらった。)
ラサの女性たち、特に10~30代の女性たちは、甘いものに対する執着はない。
チョコレートに対する欲望も、驚くほどゼロである。
しかしながら彼女たちは、辛い料理、特に、「涼粉」(「リャンフン」;チベ語で「レビー」)
と呼ばれるオヤツに唐辛子をふんだんにかけて食べるのを
<至福のひと時>と感じているようなのである。
「涼粉」とは、緑豆の粉から作られる「ところてん状」の食べ物で、
唐辛子やゴマ、ピーナツ、刻みネギなどが振りかけてある。
おそらくは中国の中西部が本場で、回族地域などでよく見かける。
昨日、上の写真を撮るために、ラサで最も流行っていると思われる
涼粉屋さんに行き、注文し、改めて味わったが、
どのあたりに誘惑が潜んでいるのか、やはりさっぱりよく分からなかった(苦笑)。
(かといって、食べれないことはなく、小腹が空いたときにはよい。)
これは想像だが、この唐辛子の辛さと、ところてんの「ぷにょぷにょ感」が口の中で
混ぜ溶け合うところに、ある種独特の快感を与えているような気がする。
そう、この味・舌触りを、やや強引に表現すると、<辛い杏仁豆腐>のそれといってよい。
(女の子で賑わうこの店。)
今ラサで最も流行っている、この涼粉屋さん、
実は風のお客さんがよく泊まれるDホテルのすぐ横にある。
将来ラサに来られるみなさん、
特に、ラサ女性の味覚の不思議について知りたい方、
この<激辛杏仁豆腐>をぜひお試しあれ!
ラサ人の嗜好の秘密が分かるかも!?(笑)
1月15日
(ラサの)天気: ほぼ快晴
(ラサの)気温: -6~8度 (朝晩とても冷えます!就寝時は携帯用湯たんぽ、オススメです!)
(ラサでの)服装: 昼間は厚手のフリース、ダウンなど。 夜は、ダウン、コートなど。
晴れの日は日差しがとてもきつくなるので、日焼け対策は必須。空気は非常に乾燥しています。
この季節、雨は降ることは少ないですが、雨具は念のため持ってきたほうがいいでしょう。