~ 人類学者の徒然なる詩考と猛想 ~

外国語の勉強の秘訣!(+ 風・チベット語講座のご案内)[LHASA・TIBET]

秘訣とは なくはないもの でもあらず

あらずともやる 外語の「まねび」

 

 

 

 

僕がチベット語を勉強し始めたのは、三十歳になってからである。

「研究のためにチベット語を」、ということであった。

博士レベルの研究というのはほぼ間違いなく、

長期間スランプに陥るもので、僕にとってはチベット語の勉強というのは、

研究からの、現実からの、ある種「逃避」のようなところもあり、

一時期は本当に集中してやったものだ。

 

昔読んだ柄谷行人の本のなかで、

彼が物事を考えるのに疲れはて、袋小路に入ってしまったとき、

語学の勉強に励んだと書いてあった。

語学の勉強はなるほど、「進んでいる」感覚を我々に与えてくれるからだという。

特に勉強し始めは、やればやるほど身についている実感を、外国語学習は与えてくれる。

にっちもさっちもいかない状況において、「進んでいる」感覚というのは、

たしかに精神の安定に役立ってくれるのである。

 

日本を代表する哲学者をして、この見解。

ということで、僕も柄谷行人にあやかって、安易にそして堂々と

チベット語の世界へ逃げていたのである、笑。

 

imgp3991

 

ところで、

外国語の秘訣というのはあるのだろうか。

「どうやってチベット語を勉強したのか、中国語、英語をやったのか」

とよく聞かれるが、返答にいつも困ってしまう。

 

しかし、ただひとつ思うのは、

僕と同じよう、ある外国語を学んでいる人たちから、特に自分よりレベルの

少し高い人たちから、非常に多くを学んできた、と思うのである。 

例えば英語でいえば、アメリカ人などネイティヴの人間からよりも、

英語を母語としないが努力で流暢に話すことのできるようになった

ヨーロッパ人や日本人から、多くを学んだように思う。

 

ネイティヴから学ぶ―

これは外国語の勉強では必須事項である。

これは当然すぎるほど当然である。

そもそも、「その当のネイティヴの人たちと話すために」、勉強するのであるから。

 

でも、ここで落とし穴がある。

どうあがいても、どうがんばっても、どれほど時間をかけても、

「ネイティヴの人たちのように話す」のは、思いのほか、至難の業なのである。

それほどの深い断絶が、異なる言語同士に横たわっているのである。

(例えば、日本文化に長年どっぷり浸かっていた人間が、

アメリカ英語をあのアメリカ的なノリで話すことの

計り知れない困難さを想像してみれば分かるだろう。)

 

非常に若いときに外国語の環境にいて、

それをマスターした人たち(例えば帰国子女の人々)や語学の天才は別として、

ある程度年齢を超えてからの外国語の勉強となると、

「ネイティヴのように」話す、言葉を選ぶ、話を繋げる、文章を書くのは、

夢のまた夢のまた夢、ということになる。

 

imgp3651

 

そこで僕が思うのは、

自身にとっては本質的に外国語なのだけど、

それを後天的に身に着け、流暢に操作できるようになった人たちの

話し振りや書き振りに、我々が学べるところはとても大きい、ということである。

 

それはなぜか。

 

ここで僕は、

昔「物まねタレント」のコロッケが、あるお笑い番組で言っていたことを思いだす。

それは、こういうものである。

タレントのものまねを速く、効果的にマスターするコツは、

そのタレントのものまねが上手い人のまねをする、

つまり、オリジナルをそのまままねようとするよりも、

オリジナルのまねが上手い人をまねる、ということである。

 

このコメントには、語学の勉強においても役立つような真理が含まれている。

 

オリジナルの発音や話し振りをまねるのは、相当難しい。

でも、オリジナルのまねに成功したコピーをまねると、

そのコピーの<親密な不器用さ>の加減のせいか、

オリジナルへの近道になるのである。

オリジナルをそのまま真似るのが、道を切り開きながら歩くのだとしたら、

コピーを真似るのは、目の前にすでに敷かれた道を歩くことになろう。

どんなに凡庸で「かっこわるく」見えようとも、である。

 

外国語の学習には、ネイティヴから学ぶのが基本だが、

我々のように耳が特によくもない一般人にとって、

上のような<まねのまねの利>からの視点が意外に見過ごされているような気がする。

 

よく言われるよう、畢竟「まなび」は「まねび」なのである。

 

imgp4001

 

ところで、

3年ぐらい前からたまにフランス語を勉強している。

が、一向に上達しない。

見事なほどに上達しない。

基礎を何度もなぞって、それさえも満足に終わらずに途中から戦線離脱である。

これも、真似ができる人が近くにいないせいだと、勝手に思っている。

 

昔、これまたお笑いの間寛平だったと思うが、

オレ、フランス語できんねん、とかで、下のセンテンスをなんとも流暢に発していた。

 

ジュトジュデニジュ、アトジュデサンジュ、

タコアシハッポン、イカアシジュッポン。 

 

(10と10で20、あと10で30)

(タコ足8本、イカ足10本)

 

今の僕のフランス語は、このレベルに毛が少し生えた程度である。

 

近くに真似できる人がいないせいであろう。

 

Daisuke Murakami

 

<<風のチベット語講座のご案内>>

 

来春、風のチベット語講座が開講されます。

講師はチベット医の小川康と村上大輔です。

 

小川康のチベット語講座は、1~2ヶ月に渡る長期のもので、

チベット語のほかチベット医学、民謡の話などもあります。詳しくはこちらをご覧ください。

 

村上大輔のチベット語講座は、東京で二回、大阪で一回あります。

計三回、どれも同じ内容となります。限られた時間の講座のため(4時間)、

チベット語をマスターするため、というよりも、チベット語の世界を堪能していただくのが主目的になります。

詳しくはこちらをご覧ください。大阪のご案内はこちらです。

 

前回のチベット語講座では、多くの方が問い合わせてくださったにも関わらず、

【限定20名】ということで、すぐ満員になってしまい、大変、申し訳ございませんでした。

今回は上のように日程、講師とも「選り取りみどり」(笑!?)ですので、

ご興味のある方はできるだけ早く申し込んで頂ければ、席を確保できるかと思います。

 

12月20日

(ラサの)天気: ほぼ快晴

(ラサの)気温: -7~7度 (朝晩とても冷えます!就寝時は携帯用湯たんぽ、オススメです!)

(ラサでの)服装: 昼間は厚手のフリース、ダウンなど。 夜は、ダウン、コートなど。

晴れの日は日差しがとてもきつくなるので、日焼け対策は必須。空気は非常に乾燥しています。

この季節、雨は降ることは少ないですが、雨具は念のため持ってきたほうがいいでしょう。