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~ 人類学者の徒然なる詩考と猛想 ~

家族万華鏡 [LHASA・TIBET]

今日はみっつ、小さな話を。

 

 

 

 

今から八年ほど前。

ある日本人の男性とチベット人女性が結婚した。

美男美女のカップルである。

僕も彼らの小さな結婚パーティに呼ばれ、チュパ(チベットの民族衣装)を着て

お祝いに行ったのだった。 

(多くのラサ人の結婚式とは違い、)本当に小さなパーティで、

決して凝ったものではなかったが、

それでも祝おうとする人々の気持ちの表れであろう。

小さいレストランの中には、温かい雰囲気が漂っていた。

 

その当時、二人はお互いの言語をほとんど話すことができず、

僕は正直、どうやってコミュニケーションをとっているのだろうか、

これからどうやって将来の話し合いをしていくのか、

お節介ながら、ちょっと心配になったのをよく覚えている。

 

先日、その二人に偶然会うことができた。

 

嫁さんの初出産のため、日本からラサに戻ってきたのだ。

彼は、非常に流暢なチベット語を話し、

また彼女は、彼以上に流暢な日本語を話していた。

 

でもそれ以上に、僕が打たれたのは、

恋人同士の雰囲気を漂わせながらも、

それ以上の絆が二人の間に流れていたことである。

それは「当たり前」で、実際「そういうもの」なのかもしれないが、

ほんとうにそれはリアルなものだった。

新しい家族を迎えようとする二人の間には、

何かしらの力が漲(みなぎ)っていたのである。

新しい命をもうける男女とは、こういうものなのだろうか。

八年前のおぼこい二人のことを思い出すと、不思議な気持ちになってくる。

 

言葉が先か、思いが先か―。

 

それは分からない。

文化や言語を越える間柄だったら、なおさらである。

 

これまで越えてきた山も多かったに違いない。

お二人を心から祝福したい。

 

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(ハン君の家族とともにチベット鍋)

 

数週間ほど前、風の現地手配会社(Tibet Kaze Travel)の日本部長であるハン君、

そして彼の嫁さん、娘さんと一緒に夕ご飯を食べた。

 

ハン君は漢民族、嫁のツェヤンはチベット族

今年小学一年生になったばかりの娘、佳恵(ジャーフイ)は、ハーフということになる。

「佳恵」という名、将来日本語でも「よしか」と自然に呼んでもらえるよう

ハン君がよくよく考えて名づけたようである。

「血」と「名」が、多文化を背負うよう、佳恵を運命づけている。

 

佳恵は僕を見ると、イタズラ好きの茶目っ気たっぷりの目で、

ゴム鞠のように跳ねてくる。父ちゃんに似たのであろう(笑)。

 

この佳恵、実はつい半年ほど前まで成都にいるハン君のご両親の実家に住んでいた。

そのため、中国語しか話せない。

 

しかし今はラサに、そしてハン君とチベット人の母ちゃんのもとにいる。

自然、佳恵は、チベット人学級に入れられた。

ハン君の言葉をそのまま引用すると、

チベット人とも、ちゃんと交流できるように」。

ラサに長く住み、チベット語母語のように操るハン君の思いが

この短い言葉の中に滲み出ていた。

 

チベット語の習字、ほんとびっくりするぐらい、すっごいうまいよ~、うちの娘。」

ハン君がニコニコ顔で続ける。

 

佳恵、クラスでは彼女以外すべてチベット人、だそうである。

佳恵とチベット語で話せるようになるのは、そう遠い日のことではないだろう。

 

今春ぐらいから、ハン君、急にしっかりしてきたなぁ、と思っていたが、

その秘密はどうやら「娘-効果」であった。

子供がいても、一緒に住むと住まないとでは、これほどまでに違うものか、

とハン君の変化を見ながら思う。

 

* * *

 

先日、会社のオフィスで。

 

社長のトプテンさんが、帰りがけに僕に突然、

「今度、養子を取ることになったんだ」。

 

「え!?」

「もう一緒に住んでるんだ。今日午後また、いろいろ役所に行って、手続きさ。」

 

孤児院(児童施設)に行ってな・・・

孤児院に行ったら、みんな養子にしたくなってくるよ・・。

できることはやろうと思って、一人だけだけど、養子にすることにした。

 

と照れくさそうに嬉しそうに、妻のリリさんとトプテンさんの

三人で写っている写真を見せてくれる。

 

照れくさそうに話すトプテンさんを見ていると、なんだか胸が熱くなってくる。

 

実は普段のトプテンさん、

ハンも含めて部下に対してはまるで「鬼神」のような顔で接している。

しかし、このことを僕に話してくれたときは、

まるで子供のように表情がほころんでいた。

まるで<チベット人の子供のように>である。

あの、写真でよく見る、チベット人の子供、のように、である。

 

この人は、やはりただ者ではない。

 

会社のトップとしての、

チベット人棟梁としての、何かしら底知れぬ吸引力が、一瞬見えたような気がした。

 

赤ちゃんは、ポタラ裏のルカン公園に打ち捨てられてあったそうである。

鼻に魔除けの黒い墨をつけられ、羊毛に包まれて。

両親はチベット人だったのである。

 

 

新しい家族を迎え入れるとは・・。

 

トプテンさんが、嬉しそうにオフィスを出て階段を下りていくその横顔は

一生忘れないであろう。

 

Daisuke Murakami

 

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(雨上がりのジョカンに虹がかかる)

 

PS 今月末から日本滞在ですが、ブログは更新し続けます。

 

9月26日

(ラサの)天気 曇りときどき晴れ

(ラサの)気温 10~21度 

(ラサでの)服装 昼間はシャツ、フリースなど。 夜はフリース、ジャンパーなど。 

日焼け対策は必須。 空気は乾燥しています。 雨具も持ってきたほうがよいでしょう。